ポロポロ大使

SF書きました。よかったら読んでみて下さい。


ポロポロ大使
フォークのような闇をつたって、ポロポロ大使はやってきた。
あの人は布団の延長で敷かれている。あの人は水と一緒に撒かれている。私はタマネギのように自分を見失っている。
天を仰ぎ、空に足りないものは、自分の死だと感じていた。
 私はある日、道でおにぎりと一緒にころころ転がっている人をみた。その日、私は駅で500円玉を落としてしまい、それがどこかに転がっていって、どこに行ったのか分からなくなってしまっていた。500円玉はどこかでおにぎりになったのだ。私は電車の窓からその光景をみて恐ろしくなった。
 私は美術館に着き、しばらくどうしたらいいか考えていた。「くさりかけの美術館はおいしいよ。」と祖母に教わってやってきたのだったが、もはや美術館を食べるどころではなくなってしまった。
 途方に暮れて館内の椅子に腰掛けていると、目の前に一人の青年がやってきた。「失礼ですが、おじょうさん、駅で500円を落とされませんでしたか?」そういって、彼は私に500円玉を渡してくれた。私はひどく安心した。
 「あなたが500円玉を落としてそれを追いかけてるのを見て、私もそのお金をおいかけました。拾ってすぐに渡そうと思ったのですが、電車の中では声をかけられなくて。渡すことが出来てほんとうによかった。」
 その人は、自分の事を「ポロポロ大使」といった。子供の頃にギターを飲み込んでしまい、ポロポロ大使に成長したのだという。「僕がギターを飲んでしまったのは偶然です。あなたのように美術館を食べるような一族に生まれたわけじゃない。」
 どこからか音楽が聞こえてきた。ここの美術館は閉館時に音楽を流すのだろうか。ちがった、それは美術館の音楽ではなかった。それはポロポロ大使が奏でた音楽だった。私はポロポロ大使に「あの、あなたのことを好きになってもいいですか。」と聞いてみた。するとポロポロ大使は「いいですよ。」と答えた。私たちは外に出た。

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